どうどう泥棒!

南京錠 コッコッコッコッコ
 夜9時ごろ、ノックをする小さい音が聞こえた。あまりに小さいので、他の部屋をノックしていると思い、しばらく放っておいた。それでもノックの音が止まないので、もしかして自分の部屋? と思い、ドアを開けてみた。すると、ロングヘアーの20歳前後の若者(女)が立っていた。
「○○の部屋ですか?」
「違うけど」
「どうもすみません」
 と言ったかと思うと、今度は向かいの部屋をノックした。だけどそこは空き部屋なので、電気が消えている。いないのは一目瞭然だ。第一、友達の部屋を知らないで来るか? しばらくしてやっぱり気になったので、友達がいる洗濯屋に行ってみた。いつもそこに誰かがいて、アパートに入っていく人をチェックしているのだ。住人でない人が来ると、
「誰に会いに来たの? 何号室? 名前は?」
と鋭くあれこれと聞く。
 だから今回もそうだと思った。だけど、おばちゃんは疲れていたのと、住人の入れ替わりが激しいので、あえて聞かなかったという。1人の女性は上がって行ったけど、もう1人の女性は下で待っていたということだけ。
「彼女、誰の部屋に来たの? 何で友達の部屋番号を知らないのかなあ?」
 などと不審に思って私が聞いていると、ちょうど2階から青年が降りてきた。そして、
「お財布と携帯電話が消えている!」
と言うのだ。彼は普段ドアに南京錠をかけて出かけるけど、その日に限ってドアの鍵だけをして、サッカーをしに30分出たそうだ。
 犯人は彼女に違いない! 南京錠がかかっていなく、電気がついていない部屋を探し、廊下側の窓ガラスを一部はずし、手を突っ込んでドアを開けたのだ。私の部屋はカーテンが厚いので、電気が消えているように見えたはずと友達は言う。本当のことは誰も分からない。頻繁ではないけど、このようなコソ泥は結構いるから、捕まえるのはまず無理だ。だから、警察も呼ばずにそのまま。自分が気をつけるしかない。それに近頃は、「普通」に見える人が泥棒をするので見分けにくいそうだ。
 不幸中の幸いは、彼のお財布に40バーツ(120円)しか入っていなかったことか。


投稿を作成しました 1995

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