友達の部屋の前に行くと卵の山。
1袋50個は入っていそうな袋が2つある。
「好きなだけ食べていいよ」
と友達のお母さんは言う。
すでに全部茹でてあるそうだ。
でも一体全体こんなにどうしたの?
「ドイステープ行きのソンテオを走らせている親戚が持ってきた」
と言う。
ドイステープ寺院まで毎日ソンテオ(乗り合いタクシー)を
運転している親戚がいるのは聞いたことがある。
でも、どういうこと?
「お供え物だよ」
え? ああ、そういうことか。
ドイステープを上る手前にクルーバーシーウィチャイという高僧の像がある。
山の上にある寺院までの道を作ったお坊さんで、
今でもタイ人(特に北部タイ)から尊敬されている。
いつ行っても像は花で飾られているし、
参拝する人の姿が絶えない。
チェンマイに来るタイ人観光客は必ずといっていいほどここに立ち寄るし、
寄らない場合は車の中から合掌をしたり、
クラクションを鳴らしたりする。
ここに願い事をしに来るチェンマイ人も多い。
チェンマイ大学が近いこともあり、
試験前や卒業前など学生の姿もよく見られる。
修士課程をしていた知り合いもハスの花を99本お供えしていた。
(「9」はタイでラッキーナンバー)
そしていろいろなものがお供えされている中に卵もあるのだ。
日本でも神社などに卵を供えたりするけど、
タイでは違う意味があるらしい。
学生に聞いてみると
「たぶん卵はこれから何かが生まれる、生命の始まり、
新しいことが始まるということで縁起がいいのでは?」
ということだ。
なるほど。
仕事や学業などにぴったりだ。
なかなか奥が深い。
でも、学生は続ける。
「でも、昔は鶏を野放しで飼っていたから有精卵の確率が高かったけど
今売っているものは無性卵だから生命の始まりになるかなあ……」