王妃様

王妃様 夕方、いつものように山にジョギングへ行った。やたらに警察官が多いところを見ると、皇室の方がいらっしゃるようだ。山の上には別荘があり、冬のこの時期になるとよくそこに泊まられるのだ。
 帰りにたらたら歩いていると、警察官がトランシーバーであれこれやり取りをしている。どうやら王妃様がそろそろ見られるらしく、もう飛行場を出発されたので、私たちに道路際で待っていてくれと言う。それでも大概、車はなかなか来ないことが多く、しばらく歩くことにした。10分ぐらいすると、また違う警察官が立っている。先ほどから全く車も人も通り過ぎないところを見ると、そろそろ王妃様が来られる頃だと察する。通行止めにしているからだ。
 そこにいた若い警察官が私たちを見ると、早くあちらに行ってくれと小道を指す。友達がぜひ王妃を見たい、と言っても道路際で立たれたら公務が務まらないらしく、お願いだから中のほうに行ってくれと言う。後で彼が文句を言われても可哀想なので、2人で茂みの後ろにしゃがんで隠れる。去年も同じことがあったけど、その時は山の麓にいたので、周りの人と直立して出迎えた。だけど、今回は山の途中なので、なぜか隠れることに。
 それでもカラカラに乾いた背の高い草からはパトカーや付き添いの車が通るのが見える。王妃様が乗られている白いリムジンもすっと通り過ぎていった。もちろん、窓ガラスが暗いので見えないけど。
 車がすべて通り過ぎる間中、若い警察官は背中を道路に向け、ずっとこちらを向いていた。私たちが変な行動に出ないかと見張っているのかと思ったけど、どうやらそうやらないといけないらしい。私たちはというと、車の行列を見つつ、息を殺しながら蚊と戦っていた。


投稿を作成しました 1995

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