サンタさんとNちゃん

友達が雑貨の買い出しにやってきた。友達といってもなんか妹みたいな子だ。私がシンガポールに引っ越した5歳の時、隣りに住んでいた。2歳年下の日本人で、私が小学校4年生で帰国するまでほとんど毎日一緒に遊んでいた。9歳から今まで、手紙やメールをたまに出す以外はほとんど会っていない。その子がつい最近ネットショップを始めたので、チェンマイに買い出しにきた。
 お互い小さかったから細かいことは覚えていないけど、昔話で盛り上がった。一番笑えたのがクリスマスの話。私がサンタクロースを信じなくなり、クリスマスプレゼントを自分で選び始めた年齢の時だ。私の兄と姉ももちろん信じていない。でも、隣りのNちゃんはまだ小さいから疑いすら持っていなかった。
 彼女によると、ある日、うちの家からニワトリのゲームの音が聞こえてきたという。スイッチを入れると、ニワトリがコッコココッーと鳴きながら台の上を回っていき、自分の前に来た時にタイミング良くボタンを押すと、お尻を振って卵を産むというものだ。卵に色がついていて、それによって点数が変わり、合計点を競うゲームだ。
 私がそのゲームをすごく欲しがっていたのをNちゃんは知っていて、サンタさんに私がお願いすると思っていたから、コッコココッーという音を聞いて、
「なんでマリちゃんちにはもうサンタクロースがきたの? まだクリスマスじゃないよ」
 と不思議に思ったという。私たちはもう誰もサンタを信じていないから、クリスマス前にプレゼントを買ってもらい、早速遊んでいたわけだ。
 疑問に思ったNちゃんは彼女のお母さんにたずねたという。そしたらお母さんが丁寧にサンタクロースの存在について話してくれたそうだ。そう、彼女はその日からサンタさんがいないことを知ってしまったのだ。なんて残酷な話だろう! でも、今聞いて笑ってしまったけどね。
 その頃、一人娘だったNちゃんは私たち3人のパワーに振り回されていたかも…。でも今となっては、都合よく楽しかったことしか思い出せない。
 あれから30年近く経ち、それぞれ違う道を歩んできたけど、こうしてまた出会えるというのはチェンマイの良さかもしれない。Nちゃん以外にも、チェンマイにいたから再会した人、出会えた人というのがとても多いから。

投稿を作成しました 1993

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