ビンラさんの受賞

　　バンコクから来たタイ人の友達とカフェでお喋り。私が持っていたタイ語の情報誌を見ると、彼はパラパラとページをめくり、「この人覚えている？」と聞いてきた。
　そのページを見ると、黒ぶちのメガネをかけた体格のいい男性が載っている。見たことあるような、ないような……、もしかして自転車の人？
　私がチェンマイに来た年に、自転車が必要だからと、彼が親しくしているこの男性から借りて（買って？）くれたのだ。タイ語が分からない時に２度会っただけなので、名前はすっかり忘れていたが、誌面にはビンラさんと書いてある。彼はチェンマイ大学の近くに住んでいて、木が生い茂る庭には、古い自転車が何十台も置いてあった。ビンラさんは大の自転車好きで、自転車でバリ島からタイまで旅したことがある。それについての本や違うジャンルの本を十何冊も出版している。その彼が、2005年の東南アジア・ライター賞を受賞したという。各国から１人選ばれるが、タイ代表はビンラさんに決まったそうだ。
　あの時の自転車はまだ私のアパートにある。何度か友達に返すと言ったが、彼も使わないので、ずっと借りたままになっている。最初の１年は、その可愛い自転車で大学に通ったが、その後はパンクしたままアパートに置いてある。タイヤを替えたい、替えたいと思っているが、古い自転車なのでちょうどいいタイヤがない。ビンラさんに相談しなくては……と思いつつ、バイクに乗る生活が続いていたので、そのままになっていた。
　５年ほど歳月が流れた今、ビンラさんはサインをする作業に毎日追われているそうだ。また聞く機会が遠ざかってしまったけど、こんな形で彼に再会したのはとっても嬉しい。おめでとうございます！