一緒に映画に行きませんか?

 時間がある時に、友達に日本語を教えてあげている。彼女は医者であり、学生であり、教師でもある。とてもおっちょこちょいで、話していると32歳とは思えないぐらい子供っぽい。約束の時間や曜日、頼んだことはすぐ忘れてしまうけど、さすが博士号をとっただけあり、日本語の単語はどんどん覚えていく。
「これは何ですか?」
 なんてテキスト通りに教えるが、彼女が聞きたいことがあると、そちらを中心に話を持っていく。
「頭が痛いです」「いつからですか?」「ニキビができました」なんて医者らしい言葉を聞いてきたかと思えば、すぐ恋の話にそれていく。笑顔が素敵な彼女はボーイフレンドがいっぱいいるけど、恋人はいない。「日本人、誰か良い人いない?」といつも言う。それなのに、知りたい言葉と言えば、「ばか!」「ひどい!」「あんたなんて最低!」。
 まだ出会う前から振られる想定だ。
「一緒に映画を行きませんか?」「親切ですね」などをまず最初に覚えるほうがいいんじゃないの? と言うと、「ああ、そうだね。そうだ。『あなたはお金持ちですか?』って何って言うの?」と彼女はニコニコしている。
 がんばれよ?。

投稿を作成しました 1995

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