アパートに着くと友達が大声をあげて飛びついてきた。「会いたかった?!」って。これだけ喜ばれるとこっちまで嬉しくなる。ひしっと抱き合ってまじまじと彼女の顔を見ると真っ黒だ。目と口を除いて泥パックで覆われている。異国にタイムスリップしたみたい。
友達の部屋で2ヶ月の空間をうめる。といっても、主に彼女の悩みや愚痴を以前のように聞くだけ。彼女は真剣に話しているけど、ちびくろサンボの顔を見ると笑いが込み上げてくる。お腹に力を入れるけど、やっぱり時々にやりとしてしまう。
話を聞いた後、2ヶ月ぶりに部屋へと入る。心臓が高鳴る。
もわっとした埃りっぽい空気が口に入る。ぐるりと見渡すが特にくもの巣もないし、蟻も行列をなしていない。鏡台付近にスズメの糞サイズのものがたくさん落ちていたぐらい。たぶんヤモリのものだろう。
ベランダもトイレも煤をかぶったように埃が積もっていたけど、動く気配はなし。トゥッケもいない。ただ、ベランダに干していたミトン状のスポンジの中に土の塊を発見。こんな所に蜂の巣を作るか? と感心しつつ、もう抜け殻だったので、そのままポイッ。 あちこちに生き物が住んだ気配は感じられたけど、私が来るまでに引っ越してくれたようだ。糞と巣の家賃を残して。