本物の沙羅双樹はツバキ? フタバガキ? サガリバナ?

サーラー

何度かこのブログでも取り上げている沙羅(さら)の木。
沙羅といえば、平家物語を思い出す人も多いのではないだろうか。
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
私も中学の時、暗記させられた。
その意味は中学生の頃はよくわからなかったが、
仏教国のタイに住んでからは「こういうことか」と納得することも多い。

ここで出てくる「祇園精舎」はインドにあった寺院という。
そして、「沙羅双樹(さらそうじゅ)の花」は仏教では重要な木で、
お釈迦様が入滅(亡くなる)した時に
2本の沙羅双樹が咲き誇り、散っていったと言われている。

でも実は、この沙羅双樹、国によって花が違うのだ。
インドではフタバガキ科の植物をさし、
白・クリーム色の小さな花が咲いている背の高い木だという。
私も実物を見たことがないが、
「沙羅双樹 インド」というキーワードでネット検索すると、たくさん出てくる。

ナツツバキ

そして、日本で「沙羅双樹」はこの白い花をさす。
ツバキ科のナツツバキだ。
インドの沙羅双樹は日本の気候では育たないため、
ナツツバキを沙羅双樹と呼んでいるという。
花が1日だけ咲いて落ちるので、
儚さを表してナツツバキが選ばれたのか、
葉の形が似ているからだ、など諸説あると聞く。

サーラー
そしてこちらはお馴染みタイで沙羅双樹と呼ばれている花。
南国らしい、ちょっとSF映画に出てきそうな形をしている。
タイ語で「サーラ」、「サーラランカー」という。
「沙羅双樹」の「サーラ」が入っているので、なるほどと思うが、
実はこちらもインドの沙羅双樹とは別物だとか。
何しろインドのものは小さい白い花だから。

タイではお寺の境内によくこの木が植わっているが、
どこかで間違って伝わったと言われている。
名前は似ているが、タイのサーラランカーは南米原産の植物で、
後にスリランカ、そしてタイに渡ったそう。
インドのとはまったく違う品種で、タイのものはサガリバナ科だ。
本当のインドの沙羅双樹を植えようと活動している人もいると読んだことがあるが、
きっとまだこの写真のサーラランカーが沙羅双樹と思っている人も多いのだろう。
なにしろお寺に植えられているし、仏画にも描かれているのだから。
私もそう思っていた。
とはいえ、こちらも1日だけしか咲かないので、儚いといえば儚い。
(後から後から咲くが)

沙羅双樹

いずれにしても、この花を見るとついつい見入ってしまう。
自然の神秘を感じずにはいられない。
香りも強く、色も形も魅惑的で、いかにも物語に出てきそうな花。
これが一面に咲いたらなんと幻想的なことだろう。

砲丸の木

日本語でホウガンノキ、英語でCannon Ball Tree(=砲丸の木)と言う。
果実を見れば一目瞭然、砲丸のよう。
どこか魔性の魅力を持つ木だ。

投稿を作成しました 1995

本物の沙羅双樹はツバキ? フタバガキ? サガリバナ?” に 2 件のコメント

  1. SECRET: 0
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    『タイの花鳥風月』(レヌカー・ムシカシントーン著 めこん刊)より抜粋。 参考にして下さい。

    昔、ワット・ポーの境内にインドからインド・サーラを移植したそうですが、気候が合わず枯れてしまったそうです。

    ラマIXはご自身が修業したワット・ボヴォニヴェートに1968年7月26日、①インド・サーラ、②タイ・サーラ、③ランカ・サーラの三種の沙羅を植えられました。

    スリランカでも沙羅双樹と言えばインド・サーラ。ただし、十九世紀の後半に建立された仏教寺院のアール・ヌーヴォー調の壁画として描かれている仏伝図に登場するのみ。

    何故砲丸木? 著者がコロンボで屈指の名刹ガンガラーマの有力な在家信者に尋ねたそうです。「この花にチャティヤ(仏塔)が見えるのです。」砲丸木の花の中を覗くと花芯が古都アヌラダプラの白い大仏搭にそっくりでした・・・

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    小堀様、どうもありがとうございます。
    「この花にチャティヤ(仏塔)が見えるのです。」のお言葉に惹かれアヌラダプラの仏塔を検索してみました。
    とても興味深いです。
    ありがとうございました。

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