スコーンの思い出

失敗作だけど、スコーン
この頃、スコーンをよく作っている。
なんか知らないけど、時々食べたくなる。

スコーンといえば、イギリスを思い出す。
私がイギリスにいた時に、家庭科の授業で初めて習ったのがスコーンだ。
先生が作り方を説明するのを必死でメモを取り、
どんなものを作るのかワクワクしていた。
英語ができない私には手を動かす授業が救いでもあったからだ。
それに日本の家庭科と違って、作業をするのはグループではなくペア。
ということは、作ったものは2人で分けられるというわけだ。
食い意地がはっている私はそれだけでニンマリ。

でも、いざ作る段階になって本やノートをしまうと、
なんとその机でこね始めた。
ゲゲ……。
机、拭いていないよ。
それにペアの子、手を洗っていない。
あっちを見てもそっちを見ても皆同じだ。

こねこねこねこね。
手垢、インク、埃、そんなものが一緒に生地に練り込まれていく。
最後に丸くして、
ケーキのように8つに切り込みを入れて焼けば終了。

焼ける間に食器を洗う。
シンクに水を張り、洗剤をどばっと入れ泡ぶくぶくにする。
その中で食器をゴシゴシゴシゴシ。
洗ったものを横の台にのせると、
なんとペアの子は布巾で拭き出した。
えっ? 洗剤ぬるぬるだよ、これからすすぐんだよ。
あっちを見てもそっちを見ても皆同じことをしている。
まるでそれが普通のことのように。
だけど私は気持ちが悪いから、
食器を取り上げてキュッキュッと音が出るまで洗う。
ほら、きれいになったでしょ、これが常識だよ、洗剤は体に悪いんだよ
と満足顔で食器を渡すけど、
ふと嫌な思いがよぎる。
まてよ、私がいくらきれいにすすいでも、
私の前の授業の人はすすいでいないから
私が使う食器はやっぱりヌルヌル?
スコーンも洗剤入り?

カーンカーンカーン
授業終了の鐘が鳴る。
オーブンからスコーンを出すとうっすらきつね色。
見た目はおいしそうだ。
熱で菌も死んだはずだろう。

でも、半分に切ると、中は生焼け……。
時間がないのはわかるけど、これをどうしろというのだろう。
ペアの子はパクッと食べる。
あっちを見てもそっちを見ても皆同じ。
確か粉は生だと虫がわくとか、お腹壊すとかいわないっけ?
私がヘタな英語で言うけど、ペアの子は不思議な顔をするだけ。
一気に食欲が失せ、私は一切れだけもらい、残りはペアの子に全部あげた。
「本当にいいの? 本当に?」
私が遠慮しているのではないかと思ったらしい。

もちろん次の日もその子は元気に学校へやってきた。
他の学生もお腹を壊さず変わりなくやってきた。
これまでに自分の中にあった「常識」がことごとく覆され、
大きなカルチャーショックを受けた1時間だった。
洗剤、手垢、机の埃、汚れ、インクを食べても体には悪くないんだと。

ーと長くなったけど、
スコーンを作るといつもこの時のことを思い出す。
あの時の味がどうだったのか覚えていないけど、
時々食べたくなる。

makrud
未だに満足いくスコーンはできないけど、
この間は紅茶の葉と無農薬のコブミカンの皮をすって入れてみた。
ジャムとは合わないけど、そのまま食べると
ふわっと柑橘系の香りが口に広がり、予想以上においしかった。
残った果汁は洗髪に使ったので、
その日は1日中部屋と髪の毛が爽やかな香りで幸せな気分になった。

投稿を作成しました 1995

スコーンの思い出” に 2 件のコメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    (コメントが消えちゃった ダブっていたらごめんんさい)

    こぶみかんは天然のシャンプー・コンディショナーだそうですね。良い香りがしたでしょうね。

    さくっとスコーンが作られるなんて良いですね。
    パン好きな私はホームベーカリーに興味あるも、
    どこでどれを買えばいいんだろうなど、思案ばかりで実現にいたっていません。
    日本でせめて経験してたらなあ。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    この間は生まれて初めてベーグルと天然酵母パンに挑戦しました。
    手でコネコネですし、肝心のオーブンがなくトースター(!)なので、「なんちゃって」パンしか仕上がりませんが、なんか楽しいですよ。

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