鮮やかな黄金色をしたお菓子を市場で見かける。
一見蒸しパンのようなお菓子だけど、この作り方を知ってタイ人の食に対する思いの深さにびっくりした。

取材させてもらったのは、ペッブリー県のトーイさん(左)と旦那さんのターンディアオさん。
「カノム・ターン」というお菓子を作って卸しているご夫婦だ。
メールでの連絡に快く応じてくれ、わざわざ昔ながらのやり方を見せてくれた。
カノム・ターンを売り始めたきっかけは、ある人のひと言だという。
それまで国内各地のイベントでペッブリーの名産品を売っていたが、そこで
「カノム・ターンのおいしいのってないよね」
という声が耳に入り、ペッブリーの名誉挽回と思い、作ることにした。
カノム・ターンは小さい頃から作っていたし、おいしいものを知っていたので、2人で売ることにした。

これはルーク・ターンといい、今の暑い時期に旬を迎える。

ヤシの一種で、中には弾力のある透明の実が入っている。
このまま食べてもいいし、シロップに浸し、氷を入れてもいい。

ルーク・ターンの若いうちは、中の実を食べるが、熟したものは中の実がなくなり、黄金色の繊維になる。
それをお菓子に使うのだ。
自然に地面に落ちたものがちょうどいい頃合いだという。
色も鮮やかだけど、香りも強い。

割いていく。
それにしても誰がこれをお菓子に使おうと思ったのだろうか!

ほぐしたものを水の中でもみこむと、このように繊維についた果肉がとれる。

それをガーゼに包んで一晩つるして、水気をとる。
4、5個のルーク・ターンから1㎏の実がとれるという。

カボチャペーストみたいなものができるので、それを上新粉、ココナッツミルク、砂糖と混ぜ、太陽にあてて発酵させるが、おいしさの秘訣は、最初に上新粉とココナッツミルクをしっかり混ぜること 。
以前は手で1000回ほど、時間にしたら30分ほどこねて生地を作っていたけど、今は機械を使っているそうだ。
また、天然発酵ではなく、ベーキングパウダーを使ったり、すでに果肉ペーストになったものが売られているので、それを使用したりして時間短縮にしているとか。
トーイさんの子どもの頃は、石臼で上新粉を挽き、ココナッツミルクは手で削ってから絞っていたというから、本当に手間のかかるお菓子だったことだろう。

できた生地はおちょこのような器に注ぐ。

蒸し器で約20分蒸す。
最初は強火で火を入れないと上がきれいに割れないそうだ。

美しい!
熱々もおいしいけど、冷めてから食べたほうが香りがふわっと口に広がる気がした。
動画はこちらをクリック。

ルーク・ターンやカノム・ターンについては、「タイ味紀行」のP84-87で詳しく紹介しています。