手作りのカノムジーン

カノムジーン

 北部では「カノムセン」と呼ぶタイ人の大好きな料理に「カノムジーン」がある。一見そうめんのようだが、大きな違いは発酵した米の粉で作っているということ。それにモヤシやハーブ、高菜漬け、バナナのツボミなどをのせ、タレをかけて混ぜ混ぜして食べる。
 タレは、北部だったら豚肉、トマト、血の塊が入った「ナームンニャオ」、中部だったら甘い「ナームプリック」や魚のだしがきいた「ナームヤー」、南部だったら魚の内臓が入った激辛「ゲーンタイプラー」などなど地域によって様々だ。
 チェンマイでもこれらのタレを味わうことはできるが、麺にこだわっている店はほとんどない。タレは作るが、麺は買ってきているというお店が多い中、麺から作っているお店がある。「カノムジーン・ロムガオ」だ。カノムジーンで有名なペッチャブン県ロムガオ郡で代々カノムジーンを作り続け、12年前からチェンマイで店を開いているワンディーさん(45)とサウェーンさん(67)家族に話をうかがった。

サウェーンさん*カノムジーンを作ってどのくらいになりますか?
サウェーンさん
私が小学生の頃からだねえ。うちの母が作っていたので、小さい時から手伝っていたよ。私を含めて子どもが7人いたけど、カノムジーンを売って子ども全員を育ててね。この子(ワンディーさん)も小さい頃からおばあちゃんの手伝いをしていたよ。

ワンディーさん*どうしてチェンマイで店を開こうと思ったのですか?
ワンディーさん
私の夫は空軍にいるのですが、チェンマイへ異動になったので一緒にきました。私も何か仕事をしようと思っていた時、自分の得意な、そして大好きなカノムジーンのお店を開くことにしました。当初、母はまだペッチャブンで自分の店をしていたので、自分で始めました。母は行ったり来たりしていましたが、5年前に店をたたみ、去年チェンマイに移り住みました。
(後ろで野菜を洗っている妹を見て)つい最近、妹家族もチェンマイに出てきて、この店を手伝っています。

旦那のブンタムさんブンタンさん(ワンディーさんの旦那)
僕もロムガオ出身だから、物心ついたときからカノムジーンを食べていたよ。平日は働いているけど、出勤前と夕方、週末には粉を茹でたり漉したりして手伝っているよ。女性たちは麺作り、僕は粉担当だね。

*カノムジーンの作り方を教えてください。

生の粉まずお米を洗って1時間ほど水に浸しておくでしょ。普通のお米だけど、ジャスミンライスはだめだよ。試したことがあるけど、麺がだまになっちゃうからね。それをザルにあげ、蓋をして3日間おいておくけど毎日夕方にお米を洗わないといけないよ。3日間といっても、その時の気候や温度によって調整する必要はあるけどね。そして今度はその米に水を加えながら潰していく。細かくなったら布の袋に入れて、重石を置き、水気を取る。すると「ペーン・ディップ」という生の粉ができるんだよ。

茹でた粉今度はそれをガーゼで包んで、30分ほど茹でる。ここが一番大切なところでね、全体に熱が伝わらないといけないから、浮いていてもいけないし、かといって床についたら焦げちゃうから気をつけないといけないよ。
それに、茹ですぎるとカノムジーンの弾力がなくなるし、茹で方が足りないと型に入れた時、硬すぎて押し出しにくいからね。おいしいカノムジーン作りはここで決まるんだよ。

粉を練る茹であがったら、今度は練っていく。途中から少しずつ水を足してね。

練るそして最後にそれをガーゼで漉せば、ほらこういうものができるんだよ。
色をつける場合は、この時点でパンダナスの葉(緑)やビートルート(ピンク)、バタフライピー花(紫)、ターメリック(黄)などの汁と混ぜればいいんだよ。

搾り出し器に生地を入れるshibori

沸騰した湯に搾り出すあとは型に入れて沸騰したお湯に流し込むだけ。

茹だったら浮き上がってくる湯だったら浮き上がってくる。

すくうそれをすくって、流水でよく洗う。

丸めていくそして丸めてお皿にのせる。

*そんなに手間隙かかっているとは知りませんでした!
サウェーンさん
私なんていいほうだよ。私の母の時代は機械がないから、お米を潰すのも生地を練るのも全部自分たちでやっていたからね。母はすごかったね。私もずっと作っていたけど、今はもう体力的にきついから生の粉を買っているよ。

カノムジーンのセット*ペッチャブン・ロムガオのカノムジーンについて教えてください。
ワンディーさん
タレはナームヤー・ガティ、ナームプリック、ナームヤー・パーの3種類。そして食卓には必ずその店オリジナルのプラーラー(塩辛の調味料)があります。これは北部の人がナムプラーをかける要領で使います。あと、茹でた野菜もありますね。チェンマイには両方ともおいていませんけど。それと、本当はナームヤー・パーにパクチーラオ(ハーブの一種)を入れるのですが、チェンマイの人は臭いといって嫌がるので、ネギに変えてあります。そうそう、昔は手で食べていましたね。

時代は流れるが、家族がチェンマイに集まり、また皆で一緒にカノムジーンを作り続けている。愛情を込めて作っている麺は一口食べれば違いがわかる。カノムジーン本来のおいしさが伝わってくるのだ。
カノムジーンは形状が長いので、「末永く幸せに一緒にいられますように」と縁起の良い料理として結婚式でよく出される。サウェーンさん家族も毎日カノムジーンを食べているからいつまでも仲良く一緒に作っていられるのかもしれない。きっとこれからも「カノムジーン・ロムガオ」の味が末永く次の世代へと受け継がれていくことだろう。

*チェンマイ情報誌「ちゃ?お」に掲載したものを一部変更してあります。

投稿を作成しました 1993

手作りのカノムジーン” に 2 件のコメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    こんにちは、今日はカノムジーンがこんなに手間がかかっていることを始めて知りました。
    もっとありがたく噛み締めて食べるんだった・・・

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    私もあっという間にできるものだと思っていました。
    それまであまりカノムジーンが好きではなかったのですが、ここのは本当においしくて、「これが本物だ!」と思いました。
    今度チェンマイへ来られるときはぜひ食べてみてください。

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