カイワット・ノック

バタバタバタッ
と先週の夜すごい音がしたと思ったら、お風呂場の窓から小鳥が飛び込んできた。
まだうまく飛べないのか、ケガをしたのかで身動きせずにじっとしている。
小鳥といっても、スズメの2倍はある。
びっくりしたので、友達を呼ぶと、
「屋上の巣から落ちたんだよ。ベランダにおいておけば、朝には母鳥が迎えに来るよ」
と両手でつかんで、ベランダの隅に置く。私が慌てて、
「そんなところに置いたんでは、鳥目で夜見えなくて落っこちてしまうかもしれないから、屋上に持っていこう」
と言う。朝、起きてそこでもし弱って死んでいるのを発見するのも嫌だからだ。
すると、友達がふと思いついたように、手を石鹸でゴシゴシ洗う。
そして、ビニール袋を取り出してきて、それで小鳥をつかむ。
お互い「あ、そうだった」と一瞬こわばる。
いや、でもこれは巣から落ちたただの小鳥だと信じるようにして、屋上へ向かう。
反射的に急ぎ足になっている。
その時、小鳥の羽毛からハエのような虫が何匹か出てきた。
なんだ、これは?
急いで小鳥を屋上において、2人で手を洗い、うがいをし、シャワーを浴びた。
あの小鳥は病気だったのだろうか? いや、違うはずだ(そう願いたい)。
病は気からで、友達が「なんだか体が痒い気がする。目も充血してきたかな」と言う。
そういわれてみれば、私も喉が痛い気がする。
もしかして、カイワット・ノック(鳥インフルエンザ)? 
お互い無口になる。
ちょうど、地元新聞で鳥インフルエンザが流行していることが書かれてあった。
死んだ鳥や病気の鳥に触れてから2、3日すると、喉が痛くなったり、咳が出たり、目が充血したりと、風邪に似た症状が出てくると。
症状がぴったりだ。
あの小鳥はもしかして病気だったかもしれない。
考えれば考えるほど2人の間に沈黙が流れる。
怖くて屋上の小鳥がどうなったか見に行くこともできない。
結局、病は気からで、別に目が充血したわけでもないし、熱も出なく、なんでもなかったのだけど、潜伏期間の数日間は本当にハラハラしたもんだ。

投稿を作成しました 1993

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