ローイクラトーン祭り

満月の今日はローイクラトン祭り。
日本でいう灯篭流しだ。
タイではバナナの幹と葉で作った灯篭に花や線香、蝋燭、お金をのせて川に流す。
川に1年の感謝と謝罪をし、それと同時に悪運も流してしまおうというものだ。
幾千もの光がゆらゆらと川を流れていくのを
いつまでもいつまでも見つめていたくなる。
(でもあれが全部川底に沈んだら環境汚染?!)

家の周りや屋台、アパートの周りにはぐるっとロウソクを立てる。
一見クリスマスのようだけど、ロウソクのやわらかい光が
あちこちで揺れて優しい気持ちになる。

空を見上げると「コムファイ」というものがフワフワ飛んでいる。
北部ではこれを空に飛ばして悪運を払う慣わしがある。
高さ2メートル、直径60センチほどの筒状のものは、
蝋を塗った和紙でできていて、固形燃料をつけて飛ばす。
固形燃料に火がつき、煙が提灯のようなものを立ち込めると、
フワッと宙に舞っていく。
無数の光が宙に漂い、この日は満天の星空になる。
初めてこれを見た時は正直「人魂」かと思い、怖かったものだ。
(美しいけどこれが屋根に落ちて火事になる事故も多々あり!)

川も空も街も光で包まれ、うっとり、夢心地。
だけど、それだけで終わらないのがタイの灯篭流し!
「静寂」という言葉が全く似合わない。
だって子どもたちは爆竹、ロケット花火、ねずみ花火を持ってきて、
所かまわずパンパン飛ばして遊ぶのだ。
人込みの中だろうが、ビュンビュン車が走る道路だろうが
放り投げてパンパン鳴らして喜んでいる。
それが怖いので、「もういい歳」の人たちはなるべく外に出ない。

だけど私は写真を撮るため外に出た。
上を見ても下を見てもロウソクの光がユラユラ揺れて、
ついつい運転を忘れてその美しさに吸い込まれてしまう。
都会の中でふとこんな瞬間を持てるなんていいなと思いながら、お寺へ向かう。
満月に浮かぶお寺なんて絵になるじゃない? と思った私が間違い。
お寺ではオレンジ色の袈裟をまとった小僧たちが、
ねずみ花火やロケット花火をボンボン飛ばして我を忘れて遊んでいる。
古に浸ってみようなんて考えていた私が間違いだった。
だからもうそれは諦めて小僧と一緒にお話しすることにした。

投稿を作成しました 1993

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


関連する投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る