乾季の終わりのこの時期は、ハチミツがとれる季節でもある。
雨が降らないので濃厚な蜜がたっぷりとれるのだ。
そして毎年この時期になると必ずベランダに蜂が巣を作りに来る。
8階のこの位置が適しているのかわからないが、住む人が変わってもここに巣を作る。
その度に部屋の住人が管理人さんにお願いして取り除いてもらう。
きっと田舎だったら、「蜂の巣だ!」と喜んでハチミツをとるのだろうけど、さすがに都会だととれる人も少ない。
私が短期で借りている今年も蜂が来た。
なんだかベランダからぶんぶん音がするなと思ったら、巣ができていた。
日に日に大きくなり、蜂も数百匹に増えた。
放っておけば、優に70㎝は超える長さになる。
管理人さんに言おうかと思ったけど、蜜蜂なので別にそんなに悪さをしないだろうと思った。
ベランダも出なければいいだけだ。
以前、田舎の人が「蜂が家に巣を作るのは縁起がいいのよ」と言っていたし。
4月になって巣が大きくなったら、誰か田舎の人にとってもらえば、おいしい自然のハチミツがとれるかも?!
と期待した。
養蜂と違って、自然の蜂蜜のおいしさは格別だから。
一応、蜂に詳しい人に聞いたら、「蜜蜂だったらキケンではないですよー」とのことだった。
ということで、そのまま放っておくことにした。
朝、昼、夜と観察するのも楽しい。
夜から明け方までじっとしている蜂が、日が昇るとともに動き出す。
あっちからもこっちからも蜂がやってくる。
巣も大きくなってくる。
うちの周りには山や木があるから、きっとおいしい蜂蜜がとれるはず!
と期待していた矢先、管理人さんから声をかけられた。
「ベランダに蜂の巣ができているようなので、明日、取りに行きます」
がっくり。
近所のこともあるので、断ることもできず……。
管理人さんは慣れたもので、殺虫剤を巣にぶわーっとかけた。
次々に蜂が落っこちていく。
蜂が弱ってきたら、大きな網で巣を囲み、がさっと落としてしまった。
かわいそうに……。
まだ巣を作り始めたばかりだったのがせめてもの救い。
それでも毎年同じ場所に作る蜂たち。
来年は森に作っておくれ。