知り合いの少年が入院した。
10万人に1、2人しかならない難病だ。
後遺症が残る人もいるけど、
合併症を起こさない限り命にかかわらない。
症状によって1週間から半年以上の入院が必要だけど、
その後は普通に会社や学校へ行かれるようになる。
でも、海外の薬を投与しないといけないので
医療費が膨大な額になる。
何しろ点滴が1本1万5千バーツ(約5万円)もする。
それを今日までに25本打った。
合計約123万円。
月収が3万円あるかないかの家庭だ。
その他、個室なので入院費がかかる。
運が良いことは両親が公務員ということ。
公務員の家族は医療費が免除されるからだ。
だから少年は治療費と入院費がカバーされる。
少年が難病とわかった時の両親や家族たちの精神状態は
安定剤を打たないといけないほどだった。
でも、点滴のおかげで少年はみるみる元気になった。
ご飯をもりもり食べ、冗談を言い、ゲームで遊んでいる。
まだ安心はできないけど、退院する日もそう遠くないらしい。
その医師の言葉通り、
早く退院して元気に学校へ行ってほしいと願うのみだ。
病院にいるといろいろな人を見る。
チェンマイの大学病院には
北タイ各県の病院では治療できない重症な患者が運ばれてくる。
都会、田舎、山岳部からタイ人、山岳民族、その他の民族がやってくる。
タイ国籍を持っている人なら、
医療を手頃な値段で受けられる。
とはいっても、対象外の薬もある。
もちろんみんなに最善の治療が施されるが、
もっと良い治療薬があると知りつつ、
手が出せずにただ見ている人もいる。
「自分ではとても出せない。公務員でなかったらと思うと……」
と少年の家族が声をつまらせながら言っていた。