数週間前からワット・チェディールアンでは大勢の人が忙しそうに働いていた。
穴を掘る人、トンカントンカンと工事をする人。
色紙を細かく切っては台紙に貼り付ける人など、
皆が一生懸命手を動かしている。
実はこれ、お葬式の準備をしているのだ。
2008年7月11日にチェディールアン寺のご住職(90)が亡くなられたが、
そのお葬式を今年1月18日にすることになったのだ。
ご住職は15歳にこのお寺で出家されている。
普通はお葬式はお寺、火葬は別の場所と決まっているけど、
偉い人やご住職が亡くなった時だけはお寺で火葬をする。
火葬に使うお神輿は「(パヤー)ノック・ハッサディリン」という動物。
ヒマラヤ山脈麓のヒマパーンという森に住んでいる伝説の生き物だ。
体は鳥、顔が象で、牙、鼻、羽があり、象5頭よりもパワーがあると信じられている。
こういうお神輿をもとももと作ってお葬式に用いていたのは、
ラーンナー地方とイサーンだとか。
数週間前はまだまだ工事現場。
ネットがかけられたところで(パヤー)ノック・ハッサディリンが作られていて、
そこが火葬場となる。
これが出来上がったもの。
ちょっと暗いけど、わかりますか?
ちゃんと鼻がくるんと持ちあがるし、羽もパタパタ動き、
まぶたも開閉できる精巧さ。
4本の竹の柱を立て、
上には生前ご住職が身に着けていた袈裟をつけて天井にする。
燃える、燃える。
あまり近付くと、
熱くて熱くて顔に焚き火をまともに受けているよう。
煙が立ち上がり、火の粉が舞っていく。
消防隊員も待機して、まるで火事現場。
火が強くなりすぎないように、時々水を放射している。
本堂に火の粉が燃え移らないようにジャー。
緊迫しているようだけど、
「皆さん、自己責任で近付いてくださいね。
もう救急車は帰ってしまったので知りませんよぉ。ハハ」
「(パヤー)ノック・ハッサディリンがあまりに美しいので欲しいと言った人がいますが、
燃え尽きた今なら持って帰ってもいいですよぉ。ハハ」
なんて冗談をとばしている。