ベルギーに“スペキュロス”というビスケットがある。フランスのアルザス地方にもあるけど、12月6日のサン・ニコラ(子供たちの守護聖人)の日に食べるスパイスのきいたビスケットだ。こげ茶色にしっかり焼いてあり、カリッと歯ごたえがある。
私はこのビスケットが大好きだ。ジンジャー・ビスケットも、パン・デビスというスパイスがきいたケーキも、1人でパクパク食べてしまうほどだ。
私が食べたい! とリクエストすると、去年までは洋菓子好きな姉がすぐ作ってくれた。それなのに、今回帰国して、私が頼むと、
「やっぱり歳をとると和菓子がいいね?」
なんて言って、台所に立ってくれない。だから結局自分で作ることにした。材料は、三温糖、バター、スパイス、牛乳、粉、ベーキングパウダー。作り方は、順番に混ぜて冷蔵庫でねかし、型をとって焼くだけ。
この時、重宝したのが例の「石うす」。スパイスはシナモン、ナツメグ、ジンジャー、オールスパイス(*)を入れるけど、それを調合するのが石うすの役目だ。スパイスのほとんどはもう粉になっているけど、「オールスパイス」だけは粒状。これをトントンと石うすで砕いていく。香りが漂う。
「インド人もこんな感じでカレーのスパイスを調合するのかな?」なんて考えると急に親近感がわいてくる。タイ料理だけでなく、何料理でも使える万能料理器具、石うす。もっともっと使うからね。庭先になんて絶対に転がさないよ。
*オールスパイス: 正露丸のような黒コショウのような形をしている。クローブやナツメグ、シナモンなどを合わせたような香りがするので、この名がついている。
私が味見した印象をいうと、正露丸のような、歯医者さんでつめものをしてもらった時のような匂いがする。でもお菓子に混ぜると飽きのこない風味になる。